精子は、卵子の待つ卵管膨大部(卵管のうち、卵巣側の太い部分)から遠く離れた膣内に、射精によって放出される。
一度の射精によって放出される精液はわずか数ミリリットル(数cc)程度だが、その中には数億もの精子が含まれている。
精子の長さは、約0.06mmで、卵管膨大部までの道のりは約20cmもある。精子を身長170cmの人間に例えるなら、その旅路は約6kmに相当する。
この距離を精子は約30分かけて進むという。
精子にとって、至急と卵管はとても広い。この広大な空間の中にある、わずか0.1mmしかない卵子を求めて、精子は旅することになる。
そのため、卵子の待つ卵管膨大部に運よくたどり着ける精子はごくごくわずかだ。
その数はわずか数百でしかない。
つまり最初の数億の精子のうち、約100万分の1でしかないのだ。
高い運動能力を持ち、かつ運よく卵子と出会えた精子だけが受精のチャンスを得るのである。
精子の旅路を邪魔するのは、子宮と卵管の広さだけではない。精子が放たれる膣内は、病原菌の侵入にそなえるため、強い酸性になっており、この環境は精子にとっても有毒なのだ。
精子はアルカリ性の精液に守られているが、ちつから子宮頚管(子宮下部の管状の部分)に入れないと、精子は膣内で運動能力を失って死んでしまう。
ただし排卵期には、膣内の過酷さはやわらぐ。子宮頚管から分泌される粘液のねばり気が減って精子は動きやすくなり、酸性度も低下するのだ。
膣内から、子宮頚管を経て、子宮腔に入っていけるのは、数億の精子のうちわずか1%程度である。
なお、精子は卵子に向かって、やみくもに進んでいくわけではない。
精子を卵子のいる場所へと導く誘引物資が存在するらしいのだ。
しかし、くわしいメカニズムは分かっていない。